より効率のよい、維持・運営費の
少ない構造への変革
「近年まで、自動車保険の試算や関連するシステムを20年ほど担当してきました。エンジニアとして担当する中で保守対応の効率の悪さが気にかかり、
『変えたい』と訴え続けていました。」(T.N)
MS&ADシステムズでは、2021年に自動車保険試算業務を対象とした「次世代IT対応プロジェクト」がスタート。最新の環境に適用するためにアプリケーションの内部構造を変えながら、今後の活用に向けてAPI化―他システムからも利用できる共通部品を作るというものだ。2024年10月にリリースを予定しているこの開発は、数十億円ほどの費用を計上。携わる人員数は社内だけでも20~30人、パートナー会社を含めると100人以上のプロジェクト体制になった。
システム開発の最上流、
企画業務で触れる計算と数字
企画業務はシステム開発における最上流である。開発の範囲や仕様を検討し、開発にかかる費用を算出するだけでなく、開発した成果として期待される利益や、投資した費用を回収するのにかかる年数までを算出する。これにより、保険事業会社に十分な情報を提供するという、非常に重い責任を担う。
「当初、システムやデータを整えるのに100億円を超える費用がかかるという試算が出ていました。しかし、100億円を超える案件となると投資を回収するのに10年以上かかる計算になります。それはビジネスとして成立しません。効果とのバランスを取り、開発を現実的な範囲に収めることに一番苦労しました。」(T.N)
最終的に費用を50%以上そぎ落とし、8年で回収できるプランに整えることで開発が決定。企画確定への道のりは“簡潔”とは程遠かった。
混沌と化したデータと
正解のない企画の難しさ
困難の原因となったのは、20年以上に渡り修正を重ねたことで複雑化した根本のデータだった。
「本来はデータ項目を整理しプログラム構造をどうするかを考えるべきですが、度重なるメンテナンスによってプログラム開発当初の仕様を紐解くのに時間がかかり、古いデータ項目の要・不要の判断が難しい状況でした。また、現状と一致する資料もほぼない状態で、整理するにも限界がありました。」(T.N)
企画業務は少数精鋭で進められる。このプロジェクトも、MS&ADシステムズから2名、現場に近いパートナー企業から4~5名で構成された。
「やりたいという気持ちで取り組んだプロジェクトでしたが、予想以上の責任がのしかかっていました。経営陣を納得させられる根拠が示せず、気持ちがくじけそうになりました。光明が見えない中、上司に相談したときに『君が無理と思うのであれば、私たちの中で一番知識のある人間が不可能と判断したんだ。私がこの企画は進められないと説明するよ』と言葉をかけてもらい、すごく励まされたと同時に身が引き締まる思いでした。」(T.N)
次世代にとってもチャンスとなる、
更なる刷新に向けて
「次世代IT対応プロジェクト」の後、「IT構造最適化」という取組が立ち上がり、現在も複数の企画が並行して進められている。
「次世代IT対応プロジェクトは、自分のキャリアにとって非常に重要な2年間となりました。2024年からは企画専門に取り組むアーキテクト部の部長として、IT構造最適化に取り組んでいます。」(T.N)
社内には、サーバを使った業務システムが700以上稼働している。アーキテクト部は、各課が管理するシステムのモダナイゼーション(※構築・稼働し始めて数十年を経過した古いコンピューターシステムを過去の資産を活かしながら最新の技術に適合した現代的なシステムへと置き換えること)を支援する立場だ。
「一度使い始めれば20年以上動かすものですから、変える機会というのは10年に一度もありません。この重要なミッションを追っているMS&ADシステムズには、10年に一度のチャンスが山のようにあります。今頑張っている若手のメンバーにも、これから加わるメンバーにも、どんどん挑戦して、成長の機会を掴んでほしいですね。」(T.N)